2010年09月09日

光の道に対する一長州人の想い



総務省が掲げる「光の道」構想に対してパブリックコメントの
募集があり各方面の企業・個人から様々な意見が寄せられていました。

本件の最大の争点は、ソフトバンク社が提出した
光の道構想実現に向けたその手法そのものと言えます。

ソフトバンクの案を要約すると、

1. NTT東西からアクセス部門の独立(以後、新アクセス会社)

2. 新アクセス会社による全家庭・企業へのFTTHの導入とメタルの全廃

3. 新アクセス会社が築いたNW網を使い各通信サービス事業者が販売を行う

大雑把な流れとしては以上のようになります。

ソフトバンクの試算によるとメタルの廃止により5000億円程度の
余裕が生まれそれを原資にFTTHを引き渡らせると言うものです。
この案にはソフトバンクの支持者を中心やデジタルデバイドを受けている
地域の方を中心に賛意が寄せられています。

しかし、一長州人としてはこの案には賛成しかねます。
その理由を過剰していきます。


■コンテンツ・アプリが不足が最大の原因

既に利活用を誘引するための基盤は整っているのに
普及が進まないことに問題がある。

「鶏が先か?卵が先か?」

この議論は常にインターネットの世界で論じられてきました。
そして今持ってその議論に決着を見ていません。

そして今回のソフトバンクの案は全戸に光を一気に広げることで
サービスへの参入を促すとしています。

しかし、現在は都市部を中心に光ユーザは既に約2000万弱います。
さらに広義のブロードバンドとしてADSLや携帯インターネットユーザ等も合わせると
数千万規模の利用者が既に存在しています。

これは光サービスだけで家庭用ゲーム機市場に迫る規模であり、
十分呼び水としての数と質を確保出来ています。

それなのに本当の意味でブロードバンドを有効的に利用出来ている
コンテンツ、アプリケーションがどれだけあるでしょうか???

ぶっちゃけ、アダルトサイトとP2Pソフトぐらいじゃなかったでしょうか??

こうなってしまった背景には特に映像コンテンツ等が顕著ですが、
各種規制が存在しています。
総務省は本来「光の道」を打ち出す前に規制の山を崩すべきなのです。

だからこそ「わざわざ光にしなくても」と言う利用者の満足度と価格のバランスが
取れずADSLからの移行も滞っていると思われます。
それが公称人口カバー率90%であるにも関わらず普及率が30%と
低迷している原因ではないでしょうか。


■設備保有者間競争を著しく阻害する

多種多様なネットワークサービスの切磋琢磨こそが
日本のインフラの発展をより高めるものと考えるからです。

SB案は全戸・全企業にFTTHを強制的に入れることを訴えています。
そもそも日本のブロードバンド環境は、各種ネットワークサービスを構築してきた
事業者間の競争によって発展してきました。

仮に新アクセス会社によって全てにFTTHが導入されればCATVや電力系、
さらには高速無線系の企業は事業が成り立たなくなります。

孫社長は「器が小さい。その上で事業を展開すればよい」と発言をしていますが、
彼らの通信サービスはYahoo!BBのADSLなど、既存事業者の設備を
間借りしてサービスを提供してきました。
つまり次元が結局のところISPのレベルでしかありません。

しかし、現在の日本のブロードバンドはISP的な競争はもちろんですが、
それ以上に異なるネットワークサービス間の競争にシフトしているのです。
それが光ファイバーであり、ADSLであったり、3Gデータ通信、WiMaxなのです。

そのパラダイムシフトを理解するべきです

■利用率100%の欺瞞

ソフトバンクの案の100%達成の考え方がおかしい。

光の道構想では「利用率100%」を掲げています。
そもそもこの設定がおかしい。
利用率100%のサービスなどあり得ないわけで、
それを無理に実現しようとするためソフトバンクが掲げているような手法になります。

ソフトバンクの案では既存ユーザとADSLからの切り替えユーザを積み上げて
約60%の利用を実現するとしています。

そしてここからが問題です。
インターネット利用のニーズがない家庭でも公共系サービスを無償で提供することで
実質的にはインターネットに接続し、それを以て100%達成とするとしています。

もはや数字遊びをしているとしか言い様がありません。

■光の有効活用、価格低減とNTTの組織論は全く関係ない

ソフトバンクの主張ではNTTを分割することで公平な競争環境を
実現でき、価格も低減できるとしています。

しかし、本質的に今回の話しとNTTの分割は全く無関係です。

それをNTTの分割がならないと日本のインターネットは廃れてしまうが
如き風潮は完全に大衆迎合的な広報活動と言わざる得ません。


■5年間で工事を実現することも費用ゼロでの実施も不可能

ソフトバンクのの案では工事を一気に行うことでコストの低下を実現し、
労働力は定年間近のNTT社員で補うとしています。

しかし、工事のコストなどは各工事関係の事業者から経験的に
不可能である旨の理由が様々上がっています。
一長州人としても全く同感の理由でした。

さらにNTTの社員を充てがうにしても、それはメタルをある日を境に
全廃されなければ配置転換等実質的に不可能です。
その時点で破綻していますし、よもや派遣やアルバイトで一時しのぎが
出来るわけも、派遣切りの問題やスキルの問題があり実現は難しい。

ここは時間をかければ問題は薄れますが別の問題があります。

それは工事に関する費用です。
現在でも思わぬ配線の工事が発生したり電源工事が発生しユーザとの
トラブルが絶えないと聞いています。
その辺りの費用をおそらくは見積もっていないと思われます。

さらに構内電話交換機を保有している企業ユーザはもっと事情が複雑です。
IP電話に対応する装置を追加するにせよ、交換機自体を更改するにせよ
費用と稼働の発生は避けられません。

また工事も休日夜間に限られる上に、事前の計画や準備も膨大です。
とても一朝一夕でならないことを総務関係の方はご想像がつくのではないでしょうか?

■光の道は国益を隠れ蓑にしたソフトバンクの経営課題解決の手段に過ぎない

そもそも総務省が提言を始めた「光の道」はかねてから
ソフトバンクが政府に持ち込んでいたました。
そして民主党の元国会議員を社長室長に招き入れるなど取り組みから生まれました。

まあ、それ自体は全く否定する気はありません。

さて、経営課題解決の手段と言うのはどういうことか??

ソフトバンク、特にソフトバンクモバイルと聞くとユーザでない方でも
「電波が入らない携帯電話」と言うイメージが強くないでしょうか。

それは元々、基地局などの投資を積極的におこなっておらず、
孫社長はしきりに800Mヘルツがないことを理由に言い訳をしていますが、
それを差し引いても圧倒的にインフラが弱いのです。

そんな脆弱なインフラに追い打ちを欠けているのがiPhoneです。
スマートフォンは従来の携帯電話よりも通信量が多くなります。
つまり、iPhoneを売らないとならないが、
売れば売るほどネットワークが辛くなるという負のスパイラルに陥ってます。

そこでソフトバンクはフェムトセルや公衆無線LANに力を入れています。
その通信回線として強制的にFTTHが引かれれば、と言うよりここで大事なのは
FTTHの装置としてWiFi機能搭載の装置を置こうとしているわけで、
そこにバイパスをさせようということです。
(全体の方向性としては否定する気はないですが、やり方がね)

その様な状況にもかかわらず設備投資を低く抑えて利益が出たように見せかけ
投資家心理ばかりを気にしているとすら言えます。


次にYahoo!BBのADSL事業です。

赤いパラソル隊を懐かしく思う方も多いのではないでしょうか??
莫大な販促費をかけて赤字を垂れ流しながら築いたADSL事業も
NTTや電力系の光サービスに市場を奪われて純減を続けています。
今後も純減は避けられず事業としては重荷になっています。

08年にはライバルであるはずのNTTに売却を打診したという報道がありました。
これはNTT東日本の副社長がインタビューで語っており
市場占有率の関係で独占の誹りを避けるためにも断ったと語っています。
(そのバータとしてフレッツの代理店になったようです)

そんな純減続きのADSLも光の道でオール光化されるのであれば
彼らにとっては草刈り場だった自社ユーザを国策を理由に
囲い込むこともできるでしょう。まさに起死回生です。

また、仮に光の道がソフトバンクが提案しているような内容で進むとすれば
次のステップではソフトバンクが最も悪評を受けている
携帯電話のネットワークですら同じ論理での構築を言い出さないとも限りません。
事実、欧州では同様の政策があるようで時々関係者が言及しています。

そうなれば今、最もソフトバンクが苦しんでいる
設備投資から開放されることになります。
これ程彼らにとって美味しいことはありません。

いずれにせよ時代のパラダイムシフトについていけない、
事業として不利になれば売却などをしてウリ逃げる。
そんな姿勢の企業が社会の根幹たるインフラを語る資格があるのでしょうか??

なお、誤解をしている人が大勢いらっしゃるようですが、
ソフトバンク自体は今日の光サービスの勃興には何一つ貢献していません。
設備投資も行わない、サービスも少し手を出しましたが赤字で撤退。
光の道にしてもソフトバンクが何かリスクを負ったり労力をかけたりという
性質の話ではありません。
むしろ競争で早々に敗退した市場にカムバックするための方策とも言えます。

今日の日本のブロードバンド市場の形成でソフトバンクのADSLサービスが
果たした役割は小さくなかった、むしろ大きかったと思っています。
ただ光に関していば彼らは何一つリスクを取らず、
リスクをとってきた事業者をないがしろにする姿勢は、M&Aのみで大きくなった
会社が母体ということもあるかもしれません。
(別にM&Aを否定する気は毛頭ないですが)

と、色々と書いてしまいました。
いずれにせよ後世に残すべきは光ありきのインフラ群ではなくて
競争から勝ち残るだけの力を持った企業でありサービスです。
目指すべき姿もそちらにあるはずなのに手段が目的化しています。

間違ってもソフトバンク案が通ることないように推移を見守っていきたいと思います。

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